NPO法人自然科学研究所
理事長 小谷宗司
国立大学法人 信州大学農学部 元特任教授
公益社団法人東京生薬協会 元理事長
日本の伝承的民間療法は、日本の風土、文化、生活の知恵に基づいて伝承されてきた、医療機関に頼らない「手当て」や、自然治癒力を高める健康法のことです。
主な種類
① 身近な薬用植物を用いた民間薬療法
② マッサージなどの身体調整
③ 温泉療法
④ 食事療法
⑤ 精神・体のバランスを整える
この中でも、①の生薬(草根木皮の類)を原料とした「民間薬療法」(伝承薬)の利用が主な療法といえます。

生薬を用いる療法として「漢方薬」があります。
これは6~7世紀ごろに中国から導入された理論体系を、日本の独自の風土や体質に合わせて、日本国内で発展させた医学体形です。(「和漢薬」とは、「漢方薬」と日本の民間薬(和薬)を合わせた広い意味の伝統薬のことを指す。)
漢方医学は、先人の病気体験が積み重なってできた「体験の結晶」といえます。
これに対し西洋医学は、疾患に対する緻密な研究と分析によって誕生した「科学の結晶」といえるでしょう。
どちらも治療を目的としていますが、漢方医学は、全身の機能を高め調節し、治癒を図る療法であるのに対し、西洋医学では、疾患の原因となっている個別の器官や組織等に作用し、体の気質をターゲットとして治そうとするのが特徴です。
どちらにも一長一短はありますが、特に漢方医学の場合は、原因不明の病気や、未病と呼ばれる発病に至らない体の不具合にも対応できるのが優れた点と言えるでしょう。
筆者は、東京生薬協会に属する薬剤師として、医師をはじめとする多くの医療人との交流があります。その中では次のような情報が注目されています。「近年医療界では、高齢化社会の進展、その他に伴い、原因の特定できない疾患が増加している」との報告があり、これは漢方医学の領分であり、戦後の西洋医学一辺倒であった療法から、今後は漢方をはじめとする伝承療法に大きくシフトするというものです。

病気の症状や程度に応じて、市販薬や医療機関を受診することは大切です。しかしながら、軽い不調であれば、身近なものを利用した民間療法、いわゆる「おばあちゃんの知恵」のような昔ながらの身体に優しい方法や、生薬を上手に取り入れることが大切だと考えています。
日頃から自分自身の持つ自然治癒力を意識し、健やかな身体を保っていけるよう努力していくことも必要でしょう。