えんめい茶本舗スタッフです。
毎日厳しい暑さが続いておりますが、皆さまご体調はいかがでしょうか。
先日、実家の父(70代)が熱中症からの「急性腎不全」を発症し、緊急入院…と言う体験をしました。幸い医療機関での速やかで的確な対処のお陰で、順調に回復し退院にいたりましたが、一時的に生死の境を彷徨う危険な状況に陥りました。
今回はその体験から、熱中症の怖さと、なぜ腎不全になったのか、なぜ熱中症で命を落とすことがあるのか…について、お伝えできる範囲で書いていきます。
緊急入院までにどんな症状があったか
一日目
[朝]
目覚めからダルさなどの体調の悪さを感じる。
[昼]
外作業を始めるが、具合が悪くなり横になって休む。
血圧を測るとかなり低く、息苦しい。
[夕方]
最寄りのかかりつけ医を受診し、「熱中症のようだ」と、点滴ではなく経口補水液をこまめに摂るよう勧められて帰宅。食欲がないためお粥と梅干しを食べ就寝。
[深夜]
気持ち悪さで目が覚める。このときはトイレで嘔吐し一度気を失ったが、その後目が覚めベッドにもどり経口補水液を飲む。
再度気持ち悪さで目覚め、嘔吐と同時に気を失ったが、ふたたび目が覚めベッドにもどる。
ニ日目
[朝]
食欲がなく食べられない。再度かかりつけ医を受診し、紹介状をもらって大きな病院へ行くよう勧められる。
[昼]
緊急外来へ。2時間にわたる検査の結果、心拍が30まで下がり、カリウムが危険値のため緊急入院となる。
本人もまた同行した家族も、その日のうちに帰れると思っていたため本当にびっくりしたと言っていました。後で内容を聞いてゾッとしましたが、父は入院した日の寝ている間に、心拍がさらに20まで下がり、看護師さんから心配されていたようです。
怖いのはこのように、命の危険が迫っているのに「たかが熱中症」のような考えから、危険に気付けないことがあるのだと言うことでした。
検査の結果
検査をしてすぐにわかったのは「カリウム」の値が異常ということでした。これが腎臓の不調からか、心不全によるものかを見極める検査が連日行われ、その間カテーテルをつけてカリウムを下げる薬を点滴しました。翌日には危険な状態を脱し体調が戻り、検査の結果は「急性腎不全」。その後、適切な処置とリハビリを経て、予定より早く退院することが出来ました。
ここからは、父の体の中で起こっていたと思われることについて書いていきます。
「たかが熱中症」ではない ― 腎臓とカリウムが引き起こす危険
熱中症というと「水を飲んで涼しい場所で休めば治るもの」というイメージがあるかもしれません。しかし重症化すると、腎臓の働きが急に低下し、さらに血液中の「カリウム」というミネラルの濃度が異常な値になって、心臓の脈が極端に遅くなるなど、命に関わる事態を招くことがあります。

熱中症から腎臓に影響が出るまでの流れ
体温が上がりすぎると、体はいくつかの経路でダメージを受けます。
① 汗をかいて脱水になる → 腎臓への血流が減る
大量に汗をかくと体の水分が失われ、脱水状態になります。
脱水になると腎臓に流れる血液の量が減り、腎臓の機能に悪影響を及ぼすことがあります。
② 体温そのものが腎臓の細胞を直接傷つける
高すぎる体温は、腎臓の中で尿をつくる部分(尿細管)の細胞を直接傷つけることも報告されています。
③ 筋肉が壊れて、その「かけら」が腎臓に負担をかける
高熱によって筋肉の組織が壊れてしまうことがあり、(これを「横紋筋融解症」といいます)壊れた筋肉から漏れ出すミオグロビンやカリウムが、じん不全の原因になるとされています。筋肉の破壊が少量であれば時間とともに腎機能は回復しますが、一度に大量の筋肉が壊れると急性の腎不全に至ることがあるとされています。
つまり「脱水」「高体温そのもの」「筋肉の破壊」という3つの要因が重なって、腎臓が急激にダメージを受ける、というのが熱中症から腎不全に至る大まかな流れです。
熱中症の重症度分類でもっとも重い「Ⅲ度」では、意識障害や40℃を超える高体温とともに、肝臓や腎臓の機能障害が出現し、命に関わることがあるため入院治療が必要になるとされています。
実はそれほど珍しくない
総務省のデータをもとに次のように紹介されています。
・2024年、熱中症で救急搬送された人は97,578人と過去最多を記録し、そのうち約3割が急性腎障害を併発していた。しかもそのうちの3割は、腎機能が完全には元に戻らず後遺症が残るとされる。救急搬送に至らないような軽い熱中症でも、約1割に急性腎障害が起きている。
このように、熱中症による腎臓への影響は、決して稀な出来事ではないことがうかがえます。
カリウムって何? 体に良いところ
カリウムは、体に欠かせないミネラルの一つです。厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」では、次のように説明されています。
・カリウムには、体の水分バランスを調整する働きがある。
・また、塩分(ナトリウム)を体の外に出しやすくし、血管を広げることで、血圧を下げる方向に働く。
普段の食事をきちんと摂っていれば不足することはあまりありませんが、激しい嘔吐・下痢が続いたときや、利尿剤を長期間使っているときにはカリウムが不足することがあり、その場合は脱力感や筋力低下、食欲不振などが起こるとされています。健康な人であれば、野菜や果物を普通に食べる程度でカリウムを摂りすぎる心配はほとんどありません。
カリウムの良いところ(まとめ)
・血圧を下げる方向に働く
・体の水分バランスを整える
・筋肉や神経が正常に働くために必要
カリウムの怖いところ:多すぎると心臓が危ない
一方で、血液中のカリウムが増えすぎる「高カリウム血症」は、命に関わる状態です。
・軽いとき
筋力低下、だるさ、手足のしびれなど、風邪や疲れと区別しにくい症状。
・中くらいのとき
不整脈が起こり、動悸がしたり、意識を失ったりすることがある。
・重いとき
命に関わる不整脈を起こし、突然心臓が止まってしまうことがある。
また筋力低下がひどくなると呼吸に使う筋肉まで麻痺し、呼吸ができなくなることもある。
なぜ心臓に影響するのかというと、カリウムは心臓の筋肉が正しく動くための電気信号に深く関わっているためです。カリウムの値が高くなると、心臓の細胞の電気的な状態が乱れ、心臓の脈がうまく打てなくなっていくとされています。
心電図では、まず波形の一部(T波)が高く尖った形になり、次に脈が異常になり、進行すると命に関わる不整脈につながることが知られています。
さらに別の記事では、最初に出る症状が「心停止」であることさえあるほど、危険な状態になりうると述べられています。
なぜ熱中症のときにカリウムが急に上がるのか
高カリウム血症の原因について
・食事だけでカリウムが増えすぎることは、腎臓が正常であれば、まず起きません。
高カリウム血症は多くの場合、腎臓の障害と合わせて起こります。
・筋肉の損傷や横紋筋融解症が起きると、壊れた筋肉の細胞からカリウムが血液中に漏れ出し、高カリウム血症を引き起こすことがあります。
熱中症が原因となって筋肉が壊れ(横紋筋融解症)、筋肉からカリウムが血液中に漏れ出す。
同時に熱中症により腎臓の機能が低下し、本来なら尿としてカリウムを排出できるはずが、排出できなくなる。
「カリウムが漏れ出てくる」ことと「カリウムを外に出せなくなる」ことが同時に起きるため、血液中のカリウムが一気に危険な値まで上がってしまう、と考えられます。

早見表:カリウムの良い面・悪い面
・適量のカリウムを取れている時
良い影響:血圧をさげ、体の水分バランスを保つとされる。
悪い影響:なし
・カリウムが不足している時
良い影響:なし
悪い影響:脱力感、筋力低下、食欲不振などが起こりうるとされる。
・腎臓が正常な時
良い影響:カリウムを多少多くとっても排出できるので心配はないとされる。
悪い影響:なし
・腎臓が弱っている、急に働かなくなった時
良い影響:なし
悪い影響:カリウムを排出できず蓄積し、高カリウム血症になりやすいとされる。
・カリウムが多すぎる時(高カリウム血症)
良い影響:なし
悪い影響:しびれ、だるさ/中度:不正脈、失神/重度:心停止に至ることがあるとされる。
カリウムを減らす調理と工夫(制限が必要な場合)
- 水にさらす:野菜などは10〜20分以上水にさらすとカリウムが溶け出します。
- 茹でこぼす:たっぷりのお湯で茹でてから調理し、茹で汁は捨てます。
- 生ものを控える:生野菜サラダや生の果物、いも類、海藻、濃い緑茶や野菜ジュースに多く含まれるため注意します。
- 筋肉を避ける:カリウムは筋肉部に多く含まれるため、鶏むね肉より鶏モモ肉、赤身よりバラ肉など油多めの肉を選ぶと良い。
※肉や魚などを制限するとストレスが大きくなりやすいため、豆類やイモ類、果物、海藻から減らすなどで調整していくのがポイント。
まとめ
今回のように、熱中症をきっかけに「筋肉の損傷」「腎臓の機能低下」「カリウムの急上昇」「心拍数の異常な低下」という一連の出来事が起き、緊急入院に至るケースは、公的な統計や医師監修の情報からも十分に起こりうるものだと分かります。
カリウムは本来、血圧を整えたりするために大切な栄養素です。しかし腎臓がきちんと働いていることが大前提であり、腎臓の機能が急に落ちてしまうと、その同じカリウムが命を脅かすものに変わってしまいます。
大事な栄養素であるカリウムをきちんと知って、上手にお付き合いしていきたいですね。
また強いだるさ、意識がぼんやりする、尿があまり出ない、といった症状が見られる場合は、「様子を見る」段階を超えている可能性がありますので、早めに医療機関を受診することをお勧めします。