田七人参(三七人参)とはどんな生薬か
「田七人参(でんしちにんじん)」は、中国・雲南省を原産とする薬用植物で、古くから漢方の世界で珍重されてきました。 中国では一般的に「三七人参(さんしちにんじん)」と呼ばれ、「金不換(きんふかん)」―お金に変えられないほど貴重な薬草―とまで言われています。近年、日本では「田七人参」という名称で知られることが多いですが、現地では三七人参という呼称が一般的です。
本コラムでは、以降この呼称に合わせて「三七人参」として紹介していきます。
中国の三七市場で見た三七人参の現実
私は実際に中国雲南省・文山を何度も訪れ、三七人参が集まる市場を見てきました。 そこには想像以上に多くの三七人参が並び、同じ三七人参という名前でありながら、品質には大きな違いがあることを目に当たりにしました。
市場では大小様々な三七人参が山のように並びます。形が不揃いなもの、1年物の小さすぎるもの、乾燥状態が悪く腐ってしまっているもの、また大きいものが取引価格が高いため、小さいものをゴムで括り付けて大きく見せているものなど、見た目だけでも品質の違いが分かるものが多く見られます。
健康のための生薬でありながら、逆に健康を損なうのではないかと思ってしまうほどです。 価格も大きく異なり、同じ三七人参でも品質によって大きな差があるのが現実です。
実際の三七市場の様子をご紹介します。
・文山市内には大きな三七市場が2か所あり、写真は2024年に新設された市場の様子です。
・市場では、三七人参が地面に無造作に直接置かれていることも少なくありません。
・完全な乾燥により腐敗し、カビた『臭い三七』と呼ばれる三七人参も、市場では販売されています。
なぜ三七人参は低品質品が多いのか
三七人参は栽培に非常に手間がかかる植物です。発芽から収穫までに数年を要し、栽培環境の管理も難しいため、生産には多くの労力が必要になります。さらに三七人参は連作障害が強く、一度栽培した畑では再び栽培できないという特徴があります。そのため栽培できる土地が限られており、生産量も決して多くありません。
こうした事情から、需要に対して供給が追い付かないこともあり、市場には品質の低いものや未熟な状態で収穫されたもの等も多く流通しているのが現状です。
・大きな三七人参は高値で取引されるため、小さなものをゴムで括り付けて大きく見せているものも見られます。 
・「1年七(いちねんしち)」と呼ばれる有効成分がほとんどない1年物の極小サイズも販売されています。 
三七人参は栽培と管理で品質が決まる
三七人参は、栽培方法や管理の仕方によって品質が大きく変わる植物です。 栽培地、土壌、栽培年数、収穫後の管理、乾燥方法など、様々な要素が品質に影響します。 特に収穫後の扱いは重要で、丁寧に管理されるかどうかによって原料の状態は大きく変わります。それは有効成分にも大きく影響してきます。
文山市はベトナム国境に近く、標高1,500〜1,800mの高地に位置しています。年中温暖な気候と肥沃な土壌、そして昼夜の寒暖差に恵まれ、古くから三七人参の栽培地として知られています。
地元のパートナー企業である苗郷三七公社は、合計で東京ドーム約200個分に相当する広大な農場を各地で運営しています。私たちが訪れたのは、松林を切って開いて開墾した山の傾斜地の農場でした。水はけを良くするために高低差をつけた畝が整然と並び、標高約1,600mの環境の下で三七人参が丁寧に栽培されています。
三七人参は、強い日差しを嫌う植物のため、畑全体は幾重にも重なった遮光ネットで覆われ、光量や温度が丁寧に管理されています。こうした徹底した栽培環境の下で、高品質な三七人参が育てられています。
農園では栽培担当者が365日、基地と呼ばれる畑の脇の小屋に寝泊まりしながら三七人参の状態を見守ります。草取りや害虫の駆除など、農薬に頼らない栽培は多くの手間と時間を必要とします。責任者にはほとんど休暇がなく、用事があるときだけ町に出るという徹底ぶりで、その栽培にかける姿勢には驚かされます。
・黒姫和漢薬研究所の三七人参のパートナー企業「苗郷三七公社」徹底した管理体制で栽培しています。 
・きちんと整った三七人参の畑。3年間の育成では、一番気を遣うのは菌の発生とのこと。

・三七花の市場流通はほとんどないため、6月の採取に合わせて訪問し、年間の使用量を確保。 
・大学卒業し、苗郷三七公社に入社。 現在は訪問した圃場の責任者「王さん」

本物の三七人参を選ぶために
中国の三七市場を見て改めて感じたのは、「三七人参」という名前だけでは品質は判断できないということでした。同じ三七人参でも、栽培環境や管理体制によって品質には大きな違いがあります。本物の三七人参とは、栽培から収穫、乾燥、管理に至るまで、きちんとした体制のもとで作られているものだと言えるでしょう。
・苗郷三七公社は苗の特許を多数取得しており、有効成分の高い品種の開発を研究施設で進めています。研究棟の壁一面には、その特許証が掲げられています。 
・採取したその日に加工工場に運ばれ、洗浄・ヒゲ根カット・乾燥が行われる。ソーラー式の乾燥室で3日間乾燥させます。
・ソーラー乾燥後、低温乾燥機に入れて完全に乾燥させます。この乾燥があまいと、腐敗の元になります。
・ 原料は工場内で一度も床に直接置かれることなく、徹底した衛生管理のもと袋詰めされます。
