医食同源について

医食同源について

May 28、2026えんめい茶本舗スタッフ

NPO法人自然科学研究所
理事長 小谷宗司
国立大学法人 信州大学農学部 元特任教授
公益社団法人東京生薬協会 元理事長

 

 

少子高齢化社会を向かえ、磐石だったと思われる社会保障制度に、今私達は大きな不安を抱えています。世界でも最先端を走っていた社会保障制度は、私達の「生きることへのやる気」を底支えしてくれ、活力の保障でもありました。これが不安定になれば心配どころか、活力さえ失われてしまいます。不安を抱えて生きるより、もっと積極的に自らの健康を考えていくのが大切ではないでしょうか?その指標として、十分な医療や社会保障制度のない時代を生き抜いた先人たちの知恵や養生の考え方を、今あらためて見つめ直すことが大切だと感じます。

 

先人達の時代には、日常の食品は季節感あふれるものばかりでした。当然です。野菜工場のような施設は無く、農薬や化成肥料も無く、手にする食品はまさに季節という天の恵みに即したものばかりだったのです。このような時代を生き抜いた人々が今、後期高齢者といわれ世界最長寿国の礎を築いているのです。

今の時代、季節感の無い野菜や、あまりにも工業化の進んだ野菜・食品が身の回りにあふれ、自然に育まれたものが日常で無くなりました。直接的な因果関係は解明されていませんが、統計的に見ると明らかに私達の健康にとってマイナスの要因となっているのではないでしょうか。

先人達には、春の山菜は重要な食料でした。季節になれば家族総出で山菜を採取し、糧としたのです。同時に、このような山菜は別の側面を持っていて、今知られているほとんどの山菜が薬草としての効能効果を持っております。ウコギは鎮痛・強精・強壮、ツリガネニンジンは鎮咳・去痰、イタドリは利尿・緩下、サンショウは芳香性健胃薬、タラノキは糖尿病薬、ナルコユリは滋養強壮、フキは鎮咳・去痰薬として用いられます。このようにほとんどの山菜には薬効が認められています。それを薬としては意識せず食料として摂取してきました。今になって考えれば、この習慣がとても大切なことであったように思えてなりません。

漢方的な考えですが、生薬・食べ物には、薬効とか栄養的なものを除いて、特徴的な性質を持っています。それは服用したものや食べたものが身体の中に入って、どのような作用をするかを経験則から解明した理論です。その一例として「寒、涼、平、温、熱」という概念があります。私たちが口にするものは全て身体に何らかの作用を及ぼします。それらを摂取したとき身体を冷す作用、温める作用を強度別に分類したものです。「平」は温度的に身体に対する作用の無いもので、穀類等主食として摂取するものが該当します。夏野菜は身体を冷やす、秋野菜は身体を温めるものが多いというように考えればわかりやすいと思いますが、身体にいいものは自然の摂理に即したものであるという理論です。

漢方の概念で「食養」とは、薬膳料理に代表されるように、食べ物を単なる嗜好品(今風に言えばグルメ)として捕らえるのではなく、病気にかからないような強い身体を作るための必須のもの。積極的に健康を作り上げるものとして捉える考え方です。

流通手段が高度に発達した現代社会にあって、食料は国籍不明になりつつある中、このような自然の原則を尊重して生活を営むことは、ある意味困難かもしれません。その結果、気がつかないうちに体調バランスは障害を受けていきます。さらに、恵みの太陽光ではなく強いストレスがさんさんと降り注ぐ現代社会は、メタボリック症候群を確実に蔓延させつつあります。隠れた疾患ゆえに、多忙を理由に治療の努力を怠ると危険な状態は急速に訪れるのです。

薬で治す選択肢もありますが、対症療法を主とする現代医学にあって複合生活習慣病の妙薬は見つかっていません。隠れた疾患を短兵急に治そうとすれば、どうしても身体に無理がかかる。その表れのひとつに「副作用」があります。

同じ口から接種するものですが、薬の概念として他の栄養素と大きく違うところは、ヒトには毒として働く要素があることです。薬は健康な人にとっては日常の生活では不要のものです。病気になったときだけその疾患を取り除くために服用するものであり、用い方によって薬になったり毒になったりもするわけです。効き目が強い薬ほどその副作用も強いものです。緊急性の高い疾患には急性毒性のリスクを払ってでも強い薬を使います。それで救われるならば副作用の罪は問いません。

充分な治療効果の得られない複合生活習慣病のような場合は副作用の怖さを強く認識しなければなりません。体に自然な回復力を求めるのではない強制的な機能改善を与える薬は、長い目で見たら体に負荷を与える物質かもしれません。

 

 先人達が、十分な食料も薬もない不自由な時代に知りえた知恵「天地自然・季節の巡りに調和して生きる」に思いをはせることが健康の王道と考えます。自然の恵みの中からヒトが培ってきた知恵を多くの方に知っていただくことを願ってこの文章を記しました。

 

 

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