黒姫山麓の工場敷地に杜仲を植樹したのは、23年前の夏。杜仲の木は、雪に弱いという定説があったのですが、あえて挑戦してみようと植樹を20本行い、その結果はこのような3m近い木に成長しています。ただし、農業事業として考えた場合は極めて採取に手間がかかるため、杜仲茶の原料畑では春に剪定を行い採取しやすいように育て、さらには葉の収量を増やす工夫も行っています。
この杜仲のもともとの原産地は中国陝西省・四川省境山間部です。数千年前から杜仲の「樹皮」を医食同源の食品として利用していました。杜仲の樹皮に含まれるリグナン成分は、抗ストレス、更年期障害、血圧降下、滋養強壮に有用であることが現代の医学でも証明されており、日本でも樹皮は医薬品に指定されています。この杜仲の樹皮は、五大漢薬の1つとして古くから降圧、利尿、強壮、鎮痛のために使われており、明時代(16世紀末)に記された薬学書「本草綱目」にも、その効力や用法が記載されている漢薬です。
1990年はじめ、杜仲の葉にも樹木と同様な成分が含まれていることが認知され、さらにお茶としての味も良いことが評判となり、一気に杜仲茶ブームが到来し中国からの原料が間に合わなくなったことから、日本国内でも瀬戸内因島や長野県でも栽培が始まりました。桑の葉の栽培にも似ており、桑畑を杜仲畑に転用した農家も多かったようです。ブームが一巡した2000年以降徐々に栽培農家は減ったものの、杜仲茶の需要は十分あり日本国内産の原料も安心原料として人気を保っていました。ところが、農家の方々の高齢化が進んだこともあり、併せてコロナの影響と猛暑の影響で栽培を取りやめる方々が増えたのです。そのようなことから令和2年夏から杜仲に関しての栽培と採取、葉加工を自社で行うようになったのです。試験的に挑戦した23年前の栽培の経験があればこそ、今の杜仲茶農業もあるだということを実感する今日です。
追記 杜仲茶について
杜仲茶の効果の源は、杜仲葉配糖体です。そして成分の多くはゲニポシド酸です。また、杜仲葉に含まれるアスペルロシドが抗肥満に効果があることが明らかになりつつあります。杜仲葉は、抗メタボ、抗ストレス、アンチエイジング、さらには便通や冷え性、肩こり改善と現代社会に美味しさと健康効果を与えてくれているのです。