冷え症(冷え性)とは、手足の先端、腰など体の一部が冷えやすくなる状態のことを指します。
私たちの体には体温を調節する仕組みが備わっており、寒さを感じると血管が収縮することで体内の熱を外に逃がしにくくしたり、震えによる筋肉の運動で熱が産生されたりすることで皮膚の温度を保っています。しかしこの調節が上手くいかなくなると、手足の先端などが冷えやすくなります。原因は多岐にわたりますが、一般的には男性よりも女性のほうが冷え症になりやすいと言われています。
寒さが強まる時季、冷えのメカニズムを知って、健康的なカラダを目指しませんか。
なぜ冷える?!冷え症の原因をつきとめる
単純に薄着や過度な冷房などが原因となるほか、以下のようなものも原因として挙げられます。
・自律神経の乱れ
自律神経は血管の収縮や拡張に関わり、血流の量を増減させることで体温調節を行っています。ストレスや過度な疲れ、環境の変化、女性ホルモンの乱れなどによって自律神経の働きが乱れると、体温調節もうまく働かなくなり冷え症を引き起こすことがあります。
・血流の悪化
貧血や低血圧などの病気、運動不足や喫煙習慣、締め付けのある服装など、血流が低下しがちな原因があると、特に手足の末端などに体内の熱が届きにくくなるため、冷え症になりやすくなります。
・基礎代謝の低下
基礎代謝とは、生命を維持するために必要不可欠なエネルギーです。つまり基礎代謝が低い状態は、熱が生まれづらい体内環境を作り、冷え症を引き起こしやすくなります。
・筋力の低下
加齢や痩せすぎ、運動不足が続いてしまうなどの筋肉量の低下により、血行が悪化します。とくにふくらはぎは血液を心臓に戻すためのポンプとして機能しています。ふくらはぎの筋肉が落ちることでポンプ機能が衰え、むくみの原因にもつながります。きちんと運動する習慣を作りましょう。
・食生活の乱れ
偏りのある食事では熱(食事誘発性熱産生)が効率よく作られず、身体を冷やす原因となります。特に熱の生産効率が高いたんぱく質の不足には気を付けましょう。
鉄分の摂取量が少ない場合も、血液が十分に作られず、血行不良を引き起こします。手足の冷えのほか、頭痛や耳鳴り、目まいなどの自覚がある場合には鉄分不足の恐れがあるでしょう。
・冷えを引き起こす病気
冷え症は甲状腺機能低下症、レイノー病、全身性強皮症などの自己免疫疾患、閉塞性動脈硬化症などの症状の1つとして現れることがあります。対策を講じても冷え症が改善しないときは、背景に何らかの病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
冷え症の対策法
・温度調節をしやすい服装にする
冷え症を改善するには、身体を温めることが最重要です。外気に合わせて適切な服装を選ぶようにしましょう。例えば冬場の外は寒いので、厚着をして身体を温めますが、屋内で暖房が効いている場合に厚着をしていると、汗をかき身体を冷やしてしまいます。
反対に、夏場の外は暑いですが、室内は冷房が効いていて寒いことがあります。そんなとき、羽織れる上着を持ち歩くと便利でしょう。下着は吸湿性の良いものがおすすめです。汗をかいてもしっかり吸収するので、身体が冷えにくくなります。
・入浴は湯船にゆっくりつかり身体を温める
冷えを予防・改善したいのであれば、シャワーで済ませず、湯船にゆっくりとつかる習慣を付けましょう。全身を芯から温めるには、ぬるめの38度~40度で肩までつかり、入浴時間は15分~20分がおすすめです 。ぬるめのお湯での入浴はストレスの緩和も期待できるため、自律神経のケアにもよいでしょう。
・適度な運動をする
適度に運動をすると、筋肉量とともに、基礎代謝が上がります。激しい運動や筋トレではなく、新鮮な酸素を体に取り入れる有酸素運動として、軽いウォーキングやストレッチで問題ありません。寝る前にストレッチをすると体の緊張がほぐれ、ストレス解消にもなります。
・食生活を見直す
ダイエットなどで食事が偏ったり量が減ったりすると、身体が冷えやすくなってしまいます。身体が吸収する栄養素が少なくなり、エネルギーの生産量が減ってしまうためです。栄養バランスに気をつけた食事を心掛けると良いでしょう。特にたんぱく質(消化時に熱を生む)や鉄分(血液の材料)は積極的な摂取を心掛けましょう。
・良質な睡眠を取るよう心掛ける
睡眠は時間を十分確保するだけでなく、質にも気を配りましょう。睡眠量や質を高めることで、自律神経の乱れを妨げます。睡眠の質を高める方法はさまざまですが、まずは就寝および起床時間をなるべく一定にしましょう。 その上でリラックスしやすい室温や寝具、衣類などを整えたり、リラックス効果のあるお茶を飲んだりするとよいでしょう。
カフェインは体を冷やす?!
冷え症対策に効果的な飲み物といえば、当たり前のように温かい飲み物をイメージする方が多いと思います。確かに、体が冷え切った状態で温かい物を飲むと体がポカポカと温まります。しかし、温かい物であればなんでも効果的かというとそうではありません。 コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは少量であれば血行促進し、冷えを改善する効果が期待できますが、多く摂取してしまうと自律神経のバランスに悪影響を及ぼして体の冷えを引き起こすといわれています。
また、カフェインには利尿作用があり、尿として水分を排出することで体内の温度を下げてしまいます。これらの理由から、カフェインが含まれる緑茶やコーヒーは冷え症対策には不向きとされています。寒いとついつい温かい緑茶やコーヒーに手を伸ばしてしまいがちですが、カフェインの過剰摂取には気をつけたいものです。
どんな飲み物が冷えに効く?!
体を温める効果がある成分が含まれる温かい飲み物を意識的に取り入れて、この冬を温かく乗り切りましょう。
〇白湯
白湯を飲むことで、胃腸や内臓など体の内側から温め、基礎代謝・体温の上昇を助けてくれます。体温が1℃上がると、免疫力が5~6倍上がると言われていますので、日頃から白湯を飲む習慣をつけましょう。
〇黒豆茶
黒豆茶にはアントシアニンというポリフェノールが多く含まれており、高い抗酸化作用を持ち老化防止や手足の末端まで血流を促してくれる効果が知られています。体を温め、冷え症やむくみの改善が期待されます。
〇ルイボスティー
毛細血管を丈夫にし、血行促進効果のあるルチン、副交感神経を優位にしてリラックス効果をもたらすマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれていることで知られています。妊娠中の冷え症対策はもちろん、健康維持に効果的なお茶です。夜寝る前に飲むことで、体を温め睡眠の質を上げることもできます。
〇生姜湯
体を温める代表的な食材といえば生姜。生姜に含まれるショウガオールという成分は、血行促進し、発汗を促す作用があります。新陳代謝の促進やむくみの解消、殺菌作用などの様々な効果が期待されています。
〇ごぼう茶
ごぼう茶はサポニンというポリフェノールが豊富に含まれており、血流を良くして体を温める効果があるノンカフェインティーです。また、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」であるイヌリンが多く含まれ、便秘やダイエットにも良いことで知られている一石二鳥のお茶です。