NPO法人自然科学研究所 理事長 小谷宗司
国立大学法人 信州大学農学部 元特任教授
公益社団法人 東京生薬協会 元理事
私たちの寿命は延び続け、過去にない長寿社会に突入しています。今では「人生90」に 手が届こうとしています。気にかけたいのは平均寿命ではなく、健康寿命です。
健康寿命と平均寿命の位置づけ
●平均寿命とは、「健康の有無にかかわらない寿命の長さのこと」を表します。
男性81.25年、女性87.32年(2018年度厚労省調査)であり、高度に発展した医療制度と、世界でもNo.1と評価が高い社会保障制度の貢献が大きいでしょう。
●健康寿命(Healthy life expectancy)とは、「日常的・継続的な医療・介護に依存せず、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のこと」を表します。
男性72.14歳、女性74.79歳(2018年度厚労省調査)です。
今後平均寿命と健康寿命との差が拡大すれば、人々は健康に問題を抱え、日常生活に様々な制限が生じます。個人や家族の生活の質が下がると共に、医療費や介護、給付費の多くを消費する期間が増大し、対策が望まれます。そのため、世界保健機関も世界各国の政府や保健医療政策を管轄する厚生労働省も、“健康寿命の割合を高めること”を重要な政策目標としています。
健康寿命を延ばす秘訣
近年さまざまな健康に対する情報が行き交っていますが、健康寿命を延ばす秘訣はあるのでしょうか。「病は気から」という言葉の通り、自分は「健康である」と自信を持つ方々は、「健康でない」と考える方々に比べ、長生きすることが示されています。健康と感じるように心がけることとともに、老化と共に不具合の生じる自分の体と上手に付き合い、長く健康でいたいものです。
健やかな生活を長く送っていくために、健康問題への環境整備を整え、規則正しいバランスのとれた食事や適度な運動、何よりもそれまでの生活習慣が重要です。さらには社会参加や、生きがいといったメンタルの支えが、健康維持の大切な一要素であると言えるでしょう。
強い身体とは
強い身体とは、病気などに対して耐えることのできる力、つまり「抵抗力の備わった身体」と表現できます。強い抵抗力の備わった身体とはつまり、疲労回復が早く、病気になりにくい。そして病気に対しての免疫力が高い人のことを指します。
私たちが生きるうえで大切なことは、このようなものに抵抗できる“強い身体”を作っていくことを、しっかり意識して、必要な対応をすることだと思います。
まとめ
風邪のひき始めや症状の軽いときには、出来るだけ市販されている薬や病院に頼らず、身体に優しい民間療法、いわゆる昔ながらの「おばあちゃんの知恵」による生薬の利用も一つです。もちろん疾患の程度に応じては、病院のお世話になることも大切なことですが、その前に、意識して私たち自身の持っている『自然治癒力』を高めていくことも大切なのではないでしょうか。